ここまでお話ししてきた住宅の工業化、大量供給は、日本の住宅のコストを下げました。これは、人口増で家を必要とした若い世代には大きなメリットでした。「新築住宅の80%が一次取得者...つまり、はじめて家を建てる人である」という、世界でも類を見ないマーケットが生まれたのです。
その一方で、残りの20%に含まれる建替え希望者や、量産化住宅・工業化住宅ではない住まいを求める消費者に対して、日本の住宅業界が提示できる選択肢は極めて狭いものになりました。量産化・工業化住宅の普及、大工の技術の変化の中で、オーダーメイドや本格木造住宅など、いわゆる「注文住宅」のニーズに応えられるつくり手が大幅に減ってしまったのです。
昔なら地場の腕のいい大工に頼めばそれで済んだのですが、そんな昔ながらの大工は高齢化し、今の若い大工は本格的な注文住宅の経験がありません。今の消費者は、世界的にも注目されている伝統的な日本建築を選ぶことが難しくなってきているのです。
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