歴史的に見ても、現在の状況を見ても、大きな存在感を湛える日本の建築文化。しかし、その貴重な財産が、存亡の危機に瀕していることはあまり知られていません。
今、日本の建築文化の担い手である大工の数が急速に減少しているのです。統計によると、1995年には76万人を超えていた大工就労者数はすでに30万人を切り、国土交通省では、2020年までに20万人に迫ると予測しています。
この加速的な減少は、建築の機械化、工場生産化の結果です。既にアパートなどでは標準化、工業化が進み、大工による作業は必要なくなっています。この流れはすでに戸建住宅にも及んでおり、日本の住宅地では、量産型の家が建ち並び、同じような風景で埋め尽くされはじめています。
「大工が家づくりのすべてを担う」。そんなイメージは過去の栄光をマーケティングに利用したテレビCMで見るのみとなってしまいました。
なぜ、このような状況に陥ってしまったのか。その答えを探るべく、まずは戦後から高度経済成長期までの日本の社会の移り変わりと、住宅事情について考えていきたいと思います。
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